
この記事でわかること
- デジタルサイネージのOEM開発でトラブルが起きやすい根本的な原因
- 仕様・品質・納期・認証の4つの視点で見る具体的なトラブル事例
- トラブルを未然に防ぐために押さえておきたい進め方
- パートナー選定前にチェックしておきたいポイント
「OEM開発を頼んだのに、思っていたものと違う製品が届いた」
「量産直前に仕様の問題が発覚してスケジュールが崩壊した」
デジタルサイネージのOEM開発(他社に製造を委託する仕組み)では、こうしたトラブルが珍しくありません。

本記事では、OEM開発で発生しやすいトラブルの原因とその回避策を、事例を交えて整理します。
1. なぜOEM開発でトラブルが起きるのか
OEM開発のトラブルの多くは、発注側と製造側の「認識のずれ」から生まれます。
POINT
- 仕様書に書かれていないことは、製造側には伝わらない
- 口頭で合意した内容も、文書化していなければ後から確認できない
- デジタルサイネージはハードウェア・ソフトウェア・通信・筐体(きょうたい・機器の外側の箱部分)と関わる要素が多く、ずれの生じる箇所も多い
こうした構造上の特徴から、デジタルサイネージのOEM開発では、トラブルが発生しやすい傾向があります。
2. OEMとODMの違いを整理
トラブル事例を見る前に、OEM開発とよく混同されるODM開発との違いを整理しておきます。
OEM(Original Equipment Manufacturer)
- 発注側が用意した仕様・設計をもとに、製造側が製品を作る方式
- 発注側に設計ノウハウがあることが前提になりやすい
ODM(Original Design Manufacturer)
- 設計・開発の段階から製造側が請け負う方式
- 発注側に設計ノウハウが少なくても、製品化を進めやすい
「仕様は自社で決めたい」場合はOEM、「設計から任せたい」場合はODMが向いています。
実際には、要件整理や仕様策定の一部を製造側に相談しながら進める「中間的な進め方」を選ぶ企業も多いです。
本記事で扱うトラブルの多くは、OEM・ODMいずれの進め方でも起こり得る内容となります。
3. 事例で見るOEM開発の主なトラブル
Case1. 仕様の認識ずれによる手戻り
発注側は「こういうものを作りたい」というイメージを持っていても、その内容が製造側に正しく伝わっていないケースがあります。
完成品を確認した段階で初めて「イメージと違う」と気づき、設計から見直しになることも少なくありません。
ハードウェアは、ソフトウェアに比べて設計変更にかかるコストや時間の負担が大きい分、一度手戻りが発生すると、プロジェクト全体への影響も大きくなります。
特に認識がずれやすい項目
- 表示サイズ
- 輝度
- 通信方式
- 筐体素材
| 項目 | 認識ずれが起きやすいポイント | 対策の方向性 |
| 表示サイズ | 画面サイズ・筐体外形寸法の単位や許容誤差の認識違い | 図面・数値で許容誤差まで明記する |
| 輝度 | 屋内外の設置環境で必要な輝度基準の想定違い | 設置環境ごとの必要輝度を事前にすり合わせる |
| 通信方式 | 有線/無線、対応プロトコルの想定違い | 既存システムとの連携要件を仕様書に明記する |
| 筐体素材 | 屋外耐候性・防水性能に対する想定違い | 設置環境に応じた素材・等級を明確化する |
Case2. 品質基準が共有されていない
製造側は「完成品として納品した」と認識しているのに、発注側は「品質基準を満たしていない」と感じるケースもよく見られます。
事前に文書で合意しておきたい項目
- 不良品の判定基準
- 外観検査の基準
- 動作確認の条件
これらを合意しないまま進めると、検収の段階で認識の食い違いが表面化しやすくなります。
特に海外製造の場合、品質に対する基準値の捉え方そのものが国や工場によって異なるため、注意が必要です。
Case3. 納期遅延と部品調達の問題
製造開始後に部品の調達が遅れ、納期が守られないケースです。
スケジュールが後ろ倒しになりやすい要因
- 特定部品の品薄・供給不足
- 仕様変更に伴う代替部品への切り替え

納期遅延は発注側のビジネス計画にも影響します。
そのため、製造側がどれだけ安定したサプライチェーン(部品の調達から納品までの供給網)を持っているかは、OEMパートナーを選ぶうえで重要な判断軸になります。
部品調達や納期遅延は、量産化のフェーズで特に顕在化しやすい課題です。
合わせて「量産化の壁とは?試作止まりになるハードウェア開発の課題と対策」もご参照ください。
Case4. 認証取得の見落とし
完成品を販売しようとした段階で、PSE(電気用品安全法に基づく認証)など、必要な認証への対応ができていないことが判明するケースです。
認証対応で押さえておきたいポイントは次の2点です。
- 認証取得は、製品完成後に試験・申請を進められる場合もある
- 一方で、試験で問題が見つかると設計変更が必要になり、量産後であれば製品の改修や再製造が必要になる可能性がある
こうした事態を避けるためにも、認証要件は設計段階から製造側と共有し、それを前提とした開発を進めることが欠かせません。
POINT
- トラブルの多くは「発注後」ではなく「発注前」の情報共有不足が原因
- 仕様・品質・納期・認証は、いずれも設計段階での合意がカギ
- 海外製造では特に、基準や前提の違いを言語化しておく必要がある
ここで挙げたような認識ずれの積み重ねは、そのまま製品化そのものが頓挫する原因にもなります。
より広い視点での失敗パターンは「製品化できないプロジェクトの共通点とは?ハードウェア開発でよくある失敗パターン」で詳しく整理しています。
4. トラブルは「起きてから直す」より「起きる前に防ぐ」
ここまで見てきたトラブルには共通点があります。
それは、いずれも問題が発覚するタイミングが「製造がある程度進んだ後」だという点です。
手戻りのコストは、発覚が遅くなるほど大きくなります。
そのため重要なのは、トラブルが起きてから対応することではなく、要件整理や仕様策定の段階から製造パートナーが関わり、トラブルの芽を早い段階で摘んでおくという考え方です。

ギガテックが実践している
開発プロセス
ギガテックグループでは、
実際に以下のようなプロセスを徹底しています。
STEP 01
初回ヒアリング
製品仕様だけでなく、設置場所・温度湿度・粉塵・防水性・振動・連続稼働時間・必要な認証・通信方式など、「どのような環境で、どのように使われる製品なのか」まで確認する
STEP 02
要件整理・仕様確認
仕様書や通信プロトコルをもとに、既存システムとの接続性や運用方法まで含めて検証し、「図面通りに作る」だけでなく実際の運用環境を見据えた仕様になっているかを確認する
STEP 03
試作品レビュー
お客様だけでなくギガテック側でも同一仕様の試作サンプルを保有し、双方が同じ製品で評価できる体制をとることで、不具合発生時の再現・原因解析・改善検証を迅速に進められるようにする

そして、これらのどの段階でも共通して行っているのが、仕様変更時の認識合わせです。
仕様書に加えて、
- 図面
- 写真
- 動画
- 評価結果
- 変更履歴
まで含めて開発データを一元管理し、「何を」「なぜ」「どのように変更したのか」を関係者全員で共有します。
これにより、初回ヒアリングから試作品レビューまでのどの段階で仕様変更が生じても、認識のずれが積み残されない体制になっています。
実際の事例:使用環境を考慮した設計対応
鉄道車両内で使用するLCDサイネージのOEM開発案件では、高温・多湿・粉塵・腐食性ガス・振動といった、通常の屋内用途とは大きく異なる過酷な使用環境が想定されました。
一般的な民生機器と同じ考え方で設計すると、長期運用時の故障リスクが高まることが懸念される案件でした。

そこでギガテックでは、製造そのものだけでなく、使用環境に合わせた設計・品質対策を開発段階から実施しました。
- 基板への防湿・防腐食コーティング
- EMC対策(電磁ノイズによる誤動作を防ぐ対策)
- 防塵・防水設計
- 使用環境に適した部品選定
- 長期稼働を前提とした品質評価
こうした対応により、現在まで大きな品質トラブルは発生していません。
この案件で得られた知見は他案件にも展開されており、「どのような環境で使用される製品なのか」を開発初期に確認することが、社内の重要な確認項目として位置付けられています。
- 要件整理の段階から製造側を交え、実現性やコストの見込みをすり合わせる
- 仕様書を一度作って終わりにせず、設計が進む過程で都度お客様と認識合わせを行う
- 試作品の段階でお客様に確認いただき、量産前に認識のずれを解消しておく
ギガテックグループの体制
- サプライチェーン構築力・商品開発力・システム開発力を組み合わせて対応
- 製造そのものではなく、設計・品質・量産までを統括管理する立場でプロジェクトを推進
- 仕様書・図面・試作品・検査基準・品質基準・変更履歴をギガテックが一元管理し、製造パートナーへ展開
- 上海・深セン・香港の拠点を活用し、品質管理・納期管理・技術対応・サプライチェーン管理までを主導

こうした体制があることで、お客様は複数の工場やサプライヤーと直接やり取りする必要がなく、構想段階から量産・納品まで一貫したサポートを受けられます。
構想から量産までの具体的な進め方は「電子ペーパーモニターはこうして作られる|OEM開発・製品化の全工程を現場目線で解説」でも紹介しています。

5. もしトラブルが発生してしまった場合は?
事前の対策を行っていても、トラブルが完全にゼロになるとは限りません。
万が一トラブルが発生した場合は、以下の順番で対応を進めることが、被害の拡大を防ぐポイントです。
初動対応の流れ
現状を正確に把握する
(何が・いつ・どの工程で起きたのか記録する)
発注側・製造側の窓口を一本化し、情報が錯綜しないようにする
影響範囲(納期・コスト・品質)を早い段階で洗い出す
再発防止のため、今回の認識ずれがどこで生じたかを振り返る
よくある質問(Q&A)
Q. 仕様書さえしっかり作れば、トラブルは防げますか?
A.仕様書は重要ですが、それだけでは不十分です。
仕様書に書ききれない細かな前提や、設計の途中で生じる変更点について、都度お客様と認識をすり合わせるプロセスがあってはじめて、実際の完成品とイメージのずれを防ぐことができます。
Q. 海外製造で品質基準を合意する際、特に気をつけることは何ですか?
A.「良品・不良品の判定基準」「外観検査の基準」「動作確認の条件」を、できるだけ数値や写真を使って文書化しておくことです。
感覚的な表現のまま合意すると、検収時に認識の違いが表面化しやすくなります。
Q. 認証取得はどのタイミングで検討すればよいですか?
A.設計を確定する前の段階です。
認証によって求められる仕様上の制約があるため、設計が固まってから認証要件が判明すると、手戻りが大きくなります。
Q. 屋外や特殊環境(車両内・工場内など)向けのOEM開発では、何に気をつければよいですか?
A.温度・湿度・粉塵・振動・稼働時間といった使用環境の条件を、開発の初期段階で詳しく確認しておくことが重要になります。
一般的な屋内向け製品と同じ設計思想のまま進めると、長期運用時の故障リスクが高まる場合があります。使用環境に応じたコーティングや部品選定、品質評価まで含めて検討する必要があります。

6. まとめ:OEM開発のトラブルは「事前の合意と体制」で防げる
デジタルサイネージのOEM開発で起きやすいトラブルは、仕様・品質・納期・認証のいずれも、事前の情報共有不足が原因になっているケースがほとんどです。
本記事の要点をCheck
- トラブルの多くは「発注前」の認識合わせ不足から生まれる
- 起きてから対応するのではなく、要件整理・仕様策定の段階からパートナーが関わることで未然に防ぎやすくなる
- 万が一トラブルが起きた場合も、記録と窓口の一本化が被害拡大を防ぐ
- パートナー選定時は、実績・品質管理・サプライチェーン・認証対応・サポート体制を確認しておく
開発の早い段階でパートナーと詳細を詰め、一貫した体制で進めることが、トラブルのない製品化への近道です。
OEMパートナー選定前のセルフチェック
パートナーを選ぶ前に、以下の項目を整理しておくと、初回相談がよりスムーズになります。
- 過去の製造実績が、自社が依頼したい製品分野と近いか
- 品質管理の基準や検査体制が明文化されているか
- サプライチェーンの管理体制(部品調達・納期管理)が安定しているか
- 必要な認証への対応可否や実績があるか
- 仕様書作成のサポートを受けられるか
- 窓口が一元化されており、言語面でのコミュニケーションに不安がないか
OEM開発のお悩み、ここで相談できます
以下のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
- 以前の委託先とのトラブルがあり、信頼できるパートナーを探している
- 仕様書の書き方がわからず、製造依頼に踏み出せていない
- 品質基準の合意の仕方がわからない
- 海外製造での品質管理に不安がある

構想から量産まで、
「トラブルのない」製品化を。
「OEM開発のトラブル」でお悩みではありませんか?
OEM開発は、仕様書の作成だけでなく“量産前提の仕様策定”や“認識合わせを重ねる設計プロセス”、さらに“品質基準・認証要件のすり合わせ”が重要になります。
試作段階では問題なくても、量産直前でトラブルが表面化するケースも少なくありません。
ギガテックグループは、要件整理・仕様策定から量産・品質管理までを一貫してサポート。
構想段階からのご相談も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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