
この記事でわかること
- 電子ペーパーが通常時どのような状態で待機しているか
- バッテリーを消費する主な要因が、表示ではなく通信にあること
- 通信方式(ポーリング型・プッシュ型)によって省電力性がどう変わるか
- 通信失敗時のリトライ設計が、電力消費にどう影響するか
電子ペーパーは「省電力」だとよく言われますが、実際にどのくらいバッテリーが持つのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実はその省電力性は、デバイス自体の特性だけでなく「通信の設計」によって大きく左右されます。

この記事では、電子ペーパーのバッテリーが長持ちする仕組みを、スリープ制御と通信設計の観点から解説します。

1. 電子ペーパー端末は通常時「省電力状態」で待機している
電子ペーパーは、表示を保持するための電力をほとんど必要としない特性を持っています。
加えて、端末に搭載されているMCU(マイコン)や通信回路も、表示を切り替える瞬間以外は「Deep Sleep(深い休止状態)」と呼ばれる省電力モードで待機しています。必要なときだけ通信回路を起動する仕組みです。
POINT
- 通常時はDeep Sleepで待機し、消費電力をほぼゼロに抑える
- 表示更新や通信が必要なときだけ起動する
- 起動と休止をこまめに切り替えることが、省電力設計の土台になる
常に稼働し続けるディスプレイと比べて、この「休むときはしっかり休む」仕組みが、消費電力を大幅に抑える理由になっています。
2. 主な電力消費は表示更新と通信のタイミングで発生する
電子ペーパーは、一度画面を表示すると、電力を使わずに表示を維持できる特性を持っています。
そのため、実はバッテリーを大きく消費するのは「表示」ではなく「通信」のタイミングです。
電子ペーパーは、一度画面を表示すると、表示を保持するための電力をほとんど必要としません。
ただし、まったく電力を使わないわけではなく、主な電力消費は画面の書き換え(表示更新)と通信を行うタイミングで発生します。
バッテリーが使われる主なタイミング
- 画面の書き換え(表示内容の更新)を行うとき
- サーバーと通信を行うとき
逆に言えば、通信の頻度や方式を最適化できれば、バッテリー消費を大きく抑えられるということです。
端末の低消費電力構成
- 低消費電力のMCU(マイコン)+Bluetooth制御部:常時稼働側
- Linux+Wi-Fi主板:画像データの取得が必要なときだけ起動
- 通常時はBluetoothでアクセスポイント(AP)に更新データの有無を確認し、更新がある場合にのみWi-Fi側を起動してデータを取得する
3. 更新の有無を低消費電力側で確認し、必要なときだけ通信部を起動する
通信方式には、大きく分けて「ポーリング型」と「プッシュ型」の2種類があります。
2つの通信方式のちがい
- プッシュ型:常時接続を維持し、サーバー側から随時データを送る方式。リアルタイム性に優れる一方、バッテリー消費も大きい
- ポーリング型:デバイス側が一定間隔でサーバーに問い合わせを行う方式。通信していない時間はスリープを維持できるため、省電力性に優れる
用途に応じてどちらを選ぶか、またはどう組み合わせるかが設計上のポイントになります。
| 通信方式 | 特徴 | 消費電力の傾向 | 適した用途 |
| ポーリング型 | デバイス側が一定間隔でサーバーに問い合わせを行う方式です。通信していない間はスリープ状態を維持できます。 | 低い(間欠通信のため) | 更新頻度が低め〜中程度の電子棚札・サイネージなど |
| プッシュ型 | サーバー側から随時データを送信する方式です。常時接続に近い状態を維持します。 | 高い(常時接続に近いため) | リアルタイム性が求められる用途 |
電子ペーパー端末では、常時Wi-Fiや高負荷な処理回路を起動させ続けるのではなく、消費電力の小さい経路で「更新が必要かどうか」を確認し、必要な場合にのみ消費電力の大きい通信を行う設計が省電力性を支えています。
更新確認から表示更新までの流れ
- 低消費電力側の回路(MCU・Bluetooth)が、アクセスポイント(AP)に更新データの有無を確認する
- 更新データがある場合にのみ、消費電力の大きい通信回路(Wi-Fi)を起動する
- 起動した通信回路で画像データを取得し、表示を更新する
- 通信が完了すると、再び低消費電力の状態に戻る

このように、常時接続を維持するのではなく、必要なときだけ消費電力の大きい通信を行う設計が、電池寿命を左右するポイントになります。
4. 通信に失敗した場合のリトライ回数と間隔の設計
通信は必ずしも一度で成功するとは限りません。電波状況によっては通信が失敗することもあります。このとき、リトライ(再送信)の回数や間隔をどう設計するかが、バッテリー消費に大きく影響します。
リトライ設計で気をつけたいこと
- リトライ回数を必要以上に多く設定しない
- リトライ間隔を短くしすぎない
- 現場の通信環境に合わせて回数・間隔を調整する
無駄な通信の発生を抑えることができれば、通信の安定性を保ちながら消費電力を抑えることができます。
ギガテックの設計の強み
- 表示デバイス・制御基板・ファームウェア・Bluetooth・Wi-Fi・AP・CMSまでを一つのシステムとして設計
- AP側:1台で最大256台の端末をスキャン、同時に安定接続できる端末は5台まで。通信完了後は切断し、次の端末へ接続する「FIFO方式」を採用
- 複数のAPがある環境では、端末側が電波強度の強いAPを自動的に選択
端末・通信・AP・CMSまで含め、必要な機能を必要なタイミングだけ動かすようシステム全体を設計することが、ギガテックの省電力設計の考え方です。
5. 更新頻度を増やすとバッテリーの持ちは短くなる
表示内容の更新頻度は、運用の利便性とバッテリー寿命のトレードオフになる要素です。更新頻度を高くすればするほど、通信の回数が増え、バッテリーの消耗も早くなります。
設計時に整理しておきたいこと
- どのくらいの頻度で表示を更新する必要があるか
- その頻度に見合った通信設計になっているか
運用要件とバッテリー寿命のバランスを取ることが、長期的な運用コストの削減にもつながります。

よくある質問(Q&A)
Q. 電子ペーパーのバッテリーは、どのくらいの期間交換不要で使えますか?
A.通信設計や更新頻度によって差はありますが、設計を最適化することで数ヶ月から数年単位での運用が可能になるケースもあります。運用条件によって大きく変わるため、具体的な目安については個別にご相談ください。
Q. 通信環境が不安定な現場でも導入できますか?
A.リトライ設計やポーリング間隔の調整によって、不安定な通信環境にもある程度対応できます。現場の通信環境を踏まえた設計が重要になります。
Q. すでに運用中の設備でも、通信設計を見直すことはできますか?
A.設定変更のみで対応できる場合もあれば、機器の仕様によって見直しの範囲が変わる場合もあります。運用中の設備状況を踏まえたうえでの確認が必要です。
バッテリー寿命に影響する主な要因
- 電池容量
- 表示更新頻度
- 通信頻度・通信環境・通信時間
開発期間の目安
- EVT(設計検証):約4か月
- DVT(デザイン検証):約2か月
- PVT(生産検証):約3か月
※対応範囲によって期間は前後します。
6. まとめ:電子ペーパーの省電力性は通信の設計によって決まる
電子ペーパーの省電力性は、デバイス単体の特性だけでなく、スリープ制御・通信方式の選定・リトライ設計・更新頻度の調整といった、通信まわりの設計全体によって決まります。導入や運用を検討する際は、表示性能だけでなく、通信設計にも目を向けることが、長期運用のコスト削減につながります。
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通信設計の観点から見直しておきたいポイント
電子ペーパーの導入・運用を検討する際は、以下の点を事前に整理しておくとスムーズです。
- 想定している表示更新の頻度
- 設置場所の通信環境(Wi-Fi・LTEなど)
- 設置予定台数の規模感
- バッテリー交換や充電の運用体制
これらを整理しておくことで、通信設計の相談を進めやすくなります。
こんな通信・バッテリーのお悩み、ありませんか?
以下のようなお悩みをお持ちの場合は、お気軽にご相談ください。
- 電子ペーパーのバッテリーの持ちが想定より短い
- 設置現場の通信が不安定で困っている
- 大量台数を導入する際の通信設計に不安がある
- 更新頻度とバッテリー寿命のバランスに悩んでいる
通信設計の見直しだけでも改善できるケースがありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

バッテリー消耗の壁を
「通信設計の知見」で突破。
「省電力とは聞くけれど、実際どれくらい持つのか分からない」
――そんな現実に直面していませんか?
電子ペーパーの省電力性は、デバイスの特性だけでなく"通信の設計(スリープ制御・リトライ設計)"が重要になります。
特に設置台数や更新頻度が多い場合、通信設計の甘さは後にバッテリー交換コストの増大を招きます。
ギガテックグループは、端末・通信・APまでを一体で設計する省電力設計が得意です。
具体的な案件のご相談があれば、お気軽にご連絡ください。

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