ディスプレイ関連でよく目にする単語、OELD。Organic Electro Luminescence Diodeの略で、有機発光ダイオードと訳されます。有機材料に電気を通して発光させる仕組み、現象またはその仕組みを利用した部品やディスプレイなどを総じて有機ELと呼んでいますが、OELDもその一種です。有機EL=OELDではありませんが、スマホのディスプレイの場合有機ELといえばほぼOELDのことを指します。
アップル社の発売しているスマートフォンiPhoneでは、シリーズX、11、12、13と続けてディスプレイにOELDを採用しています。そのほかサムスンやファーウェイといったブランドでもスマホに採用されており、OELDがスマホのディスプレイとして市民権を得ていることが窺えます。
では一体液晶ディスプレイ(以下LCD)と何が違うのか。その特徴をご紹介します。
OELDの仕組み
OELDは色を持った素子自身が通電により発光することで発色する。対してLCDは液晶と複数のフィルターをバックライトが照らすことで色付きの光を出す。OELDは発光と発色にバックライトやフィルターが入らないため、その分ディスプレイを薄くすることができる。
OELDのメリット
・薄くできる、曲げられる、その分スペースに別の機能を仕込める
OELDは自ら発光するため、LCDで必要だったバックライト、液晶、フィルターの分だけLCDより薄型化、軽量化できる。薄型のため、ディスプレイを曲げることも可能になった。また薄型ディスプレイの下に指紋用センサーやカメラを埋め込むといった技術も開発されており、ベゼルレス化によるよりスマートなデザインの再現性にも繋がっている。
・黒を黒く表現でき、より鮮明な映像を表現
LCDの場合、黒色を表現する際もバックライトが画面を裏から照らした状態のため、完全な黒の表現ができない。対してOELDは黒い部分は光らせないことができるため、黒をより黒く発色できる。そのため黒はより引き締まって見え、コントラスト比の大きさから、画質の良い鮮明な映像を表現できる。
また、LCDのように電流で分子が動かされるような仕組みではないため、OELDは画面の応答速度が高くなる。すなわち、1秒間に画面を書き換える回数を示すリフレッシュレートは高くなり、動画がより滑らかに再現される。
・省エネなので電力を使うオプションも使いやすい
上述のように、OELDは黒で表現したい部分は光らせないため、その分消費電力を抑えることが可能だ。OELDはLCDより30%消費電力が少ないと言われている。その分充電も少なくて済み、常時表示など電力を使うオプションも使いやすくなった。
・視野角が広い
LCDは画面の透過を利用して発色をする性質上、斜めから見た場合光の屈折状況が変わり、正面から見たものより色味や明るさに違いが出る。OELDは透過を利用した発色ではないため、視野角が広く、斜めから見た際の色味の変化はLCDに比べて必然的に少なくなる。
・低温環境に強い
LCDは液体の性質を利用しているため、低温環境、特に氷点下での状況では応答速度が落ち、表示に支障をきたすことがある。OELDはは-30から-60℃の低温環境下でも応答速度に大きな変化が見られない。
OELDのデメリット
・焼き付き問題の可能性
同じ表示をし続けた場合に画面上に跡が残る「焼き付け」現象が起こることがある。LCDでも同様の問題の可能性はあるが、リカバリーが可能。OELDの場合、構造上修復ができない。現状、定期的に表示位置を変えることで焼き付きを防止する対策をとっている。
・輝度がLCDより低い
バックライト不要のため一般的に輝度がLCDよりも低め。太陽光のような強い光に負けて、画面が見にくくなることがある。高輝度化されたOELDもあるが、もちろん価格は高め。
・製造コストがLCDより高い
OELDの採用が増えてきたため、以前より生産コストは下がったが、LCDと比べると依然高い。低価格商品にはLCDがまだ主流。
・寿命がLCDより短い
ディスプレイの輝度が下がるまでの時間はOELDだと3万時間ほど。LCDの半分の長さと言われている。1日10時間使った場合でも約8年、20時間使った場合でも約4年は寿命が保つ。2020年3月発表の「消費動向調査」によると、日本人のスマホ平均買い替え時期が3~4年とのことで、寿命まで問題なく使える期間は長そうだ。スマホやパソコンの買い替えスパンが長い人にとっては寿命のデメリット要素が強いと言える。
総合的に見て、OELDの方が性能が良いと言えるでしょう。高価格帯の商品へはOELD、低価格帯への商品へはLCDといった採用のされ方が、しばらくは続きそうです。
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